無限関係モデル(Infinite Relational Model)の紹介資料+実装


サイボウズ・ラボでは社内向けの機械学習勉強会を 2012年から週1ペースで継続している(前身の PRML 読書会も合わせれば 2011年から)。割り振られた担当者が、書籍や論文など読んだり、実装してみた話などを紹介している。


例えば今年の4月以降の勉強会のネタをピックアップするとこんな感じ。明らかに「いわゆる機械学習」周辺にすら含みようがないネタもポロポロあるが、「機械について学習」くらいまで拡大解釈している、ことにしてほしい(苦笑)。

  • プライバシー保護データマイニング
  • 並行実行制御
  • 強化学習
  • 状態空間モデル
  • 秘密計算(暗号化したまま各種演算)
  • 確率論
  • seq2seqで計算
  • Attention
  • End-to-End Memory Networks
  • WebAssembly
  • 複雑ネットワーク
  • "Why does deep and cheap learning work so well?"
  • "Sliding right into disaster"


この勉強会の資料は一部公開されている。西尾さんの強化学習や、光成さんの暗号系などなど。


中谷も当勉強会で機械学習自然言語処理のネタを紹介してきたのだが、資料はほとんど公開してなかった。口頭の説明やその場での書き込み前提とか、著作権的な配慮が足りてないとか、内部データを使っちゃってるとか、セキララな毒舌が炸裂してるとか、要は内部勉強会なことに甘えて作りがユルかった。
まあでもやっぱりもったいないので、先週から資料を人に見せられるレベルまで改訂して公開週間を始めた。第1弾が Memory Networks で、第2弾がこの無限関係モデル(Infinite Relational Model)。



無限関係モデルは2年くらい前(↓このあたりのブログ記事を書いていた頃)にやったので、上の最近の勉強会ネタリストにはない。


古いネタを掘り起こしてきたのは、実装があるものを優先したため。


この実装では、スライドでも説明しているとおり、ベルヌーイ分布をポアソン分布に替えた「0/1 じゃない関係解析」版を実装してみている。
が、ポアソン分布が外れ値に弱いので、ちょっと多い項目があると1要素のクラスタを作ってしまい、残念ながら使い物にならなかった。負の二項分布あたりを使いたいところだが、全情報付き事後分布を閉じた形で書き下せないだろう……。
CRP を Stick Breaking で書き直して、トピック数の上限入れて、Stan あたりで解かせてみるというのも考えたけど、ちょっと大きくなるだけで死ぬよな。まずはモデルとして意味があるか検証する、ってならアリかもしれない。


「古いネタ」なんて言っちゃったが、引き続き「続・わかりやすいパターン認識」はノンパラベイズについてきちんと詳解してくれている希少な和書だろう。続パタ以外となると、今なら佐藤一誠さんの「ノンパラメトリックベイズ」(MLP青シリーズ)があるので、もう1つ選択肢がある? でも続パタとは難易度がかなり違うので、読者層は重ならないかもしれない(と、えらそうに評してみたが、買っただけでまだ読んでない。ごめん)。


ノンパラベイズ、というかトピックモデルは昨今の深層学習ブームに押されまくっているが、内部の構造を想像しながらモデリングする楽しさは(一般的な)深層学習には無いものなので、またそのうち揺り戻しが来るかも?


というわけで次の資料公開週間は、実装があるので GAN あたりかな(トピックモデル推しの舌の根も乾かぬうちに……)。
GAN の記事や資料はすでに溺れるほどあるのであまり意味ないかもしれないが、Conditional GAN をやってる人は少ないっぽいので、そのあたりはちょっとおもしろいかもしれない。