因果推論、特に傾向スコアについて日本語で学ぼうとしたら、第一に名前が挙がるのは「調査観察データの統計科学」だろう。
調査観察データの統計科学―因果推論・選択バイアス・データ融合 (シリーズ確率と情報の科学)
- 作者: 星野崇宏
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/07/29
- メディア: 単行本
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ところがこの本、数式を中心に難が多く、読み始めたはいいけど困っているという人がかなり多そうだ。実は社内の機械学習勉強会でこの本を紹介したのだが、数式のフォローがかなり大変で、そこそこ端折ったにもかかわらず、3章が終わるまでに7回ほどかかってしまった。
特に3章頭の「難所」については、社内勉強会の時の資料をもとにメモを書いてブログに公開したりもしている。
ひと段落したら勉強会の資料も公開しようかと思っていたのだが、3章をとりあえず終わらせたところで力尽きて、ほったらかしにしてしまっていた(忘れていたともいう……)。が、上の記事のコメントで公開要請をいただいたので、ようやく重い腰を上げて資料を整え公開した。
1・2章についてはおそらく大きな問題はない。せいぜい、層別解析の紹介がおざなりすぎることくらいだろう(それは他の本で得るべき知識というスタンスなのだと思う)。
3章は、つじつまの合わない数式や記述が正直かなり多い。スライドではできる範囲でフォローしたつもりだがもちろん完全ではない。因果推論が専門なわけでもなんでもないので、「こうならつじつまがあう」という想像に基づくフォロー自体が適切ではない部分だってきっとあるだろう。資料の間違いや勇み足については指摘大歓迎なので、ぜひ。
書籍と対照させながら読んでもらうためのものなので、原則として記号は書籍のものを踏襲している。が、ひとつだけ記号の付け替えを行っている(θの真値をθ_0 から θ^* に)。
理由はスライドの中でも説明しているし、実際に数式を追ってもらったら納得いくと思うが、念のため。
企業で取り扱うデータの多くは、この本で言う「調査観察データ」、つまり実験室的セッティングが許されない状況で集められたデータであり、そんな「調査観察データ」でもバイアスを抑えた分析ができる(かもしれない)傾向スコアは多くの人が興味を持つ可能性があるだろう。
それなのに、数式が追えないという理由だけで詰まったり読まれなかったりするのはもったいない。この資料が「調査観察データの統計科学」を読む人の助けになれば幸いである。
え? 4章以降はって? まだ読んでないっす……。た、たぶん4章以降は3章ほど大変じゃないと思うよ。きっと……。