「褒められなくても好きだからやる」プログラミング漫画

王道ではないプログラミング漫画 - 木曜不足の続き。漫画の中身の話。

プログラミング漫画『ぺたスクリプト』には、プログラマーってこういう生き物だよな~という自分の経験や体感をあれこれ盛り込みました。

小学生のときにNHKの『マイコン入門』で覚えた BASIC を、電気屋に並び始めたコンピュータ(今で言うパソコンですが、当時は「マイコン」と呼んでいました)に入力するのが最初のプログラミング体験でした。当時は気の利いたデモ画面やスクリーンセイバーなどもなく、電源を入れただけの BASIC のプロンプトで放置(展示)されていたので、プログラムが入力し放題でした*1

とはいえ、プログラミング初心者が店頭でゼロから入力できるプログラムなどたかが知れていて*2、簡単な数当てゲームや、

10 PRINT "アホ ";
20 GOTO 10

みたいなプログラムを実行して、画面が「アホ」で埋まるのを友達と一緒に指さしてゲラゲラ笑い合う、みたいなしょうもないことをしていました。今のScratchでも、ネコに変な言葉喋らせてゲラゲラ笑うとか是非してほしいんですよね。

役に立つものとか、おもしろいゲームを作るとか、プログラミングでなにか意味のあることをさせようとするのではなく、おこずかいを増やしてもらうため、宿題をサボるため、給食の残りを賭けたじゃんけんに勝つため、宿題をサボるため(2回目)みたいな嬉しいのは自分だけなプログラミングでもいいんじゃないかと。

しかしプログラミング必修化の時代ともなると、そういう変なことをしたら怒られたり(まあ宿題サボったら普通に怒られるでしょうが)、「習ってないことをするな」と厳しく注意されたりしないかがちょっと心配です*3。学校の宿題でプログラミングをやらされたり、授業でやっていないことをすると怒られたりすると、それ以外のことはしなくなって、プログラミングはつまらないと感じてしまいそうです。

前回の記事でも扱った王道系のプログラミング漫画(に限らずノウハウ系漫画全般?)では、基本的には怒られたりすることはなく、ちょっとプログラミングが進んだら、すごいね、やったね、と褒めてくれます。

でも実はそこもちょっと気になっていて、現実にはそんなに都合よく褒めてくれる人はいないし、好きなら褒められなくても、怒られても、けなされても、やめないですよね。

かつてはコンピュータは金持ちの道楽扱いで、プログラミング(プログラマー)には市民権がなく、迫害に近い扱いをされていました。プログラミングが趣味だと言ったらネクラ&キモい、プログラミングを仕事にしたいと言ったら、それだけはやめてくれと親に懇願されたほどです(実体験)。

別に先見の明があったわけではなく、プログラミングがただただ好きだっただけなので誇ったり恨みに思ったりとかは全然なく、でもそうした経験から「褒められるからやる、褒められないからやらない」は危険だな、と思うのです。「褒めて伸ばす」とはある意味真逆の、怒られようがけなされようがプログラミングをやめない漫画だってあってもいいはず。

なので、漫画『ぺたスクリプト』の主人公のアキラはプログラミングで褒められることなんてほとんどなく、怒られたり、お小遣いを減らされたり、反省文を書かされたり、あれやこれやヒドイ目にあいます。まあ怒られそうなことばかりやっているので当然ですが(苦笑)。

それでも次の瞬間には「ぺたスクリプト、サイコー!」「それ、ぺたスクリプトでできるよ!」と、プログラミングで何ができるかばかり探している。そんな漫画があってもいいんじゃあないかなあ。

*1:その一方で、SHARPのMZシリーズのように電源を入れただけだと何もできないコンピュータもあって、ナイコン族(高価なコンピュータを持っていない人をそう呼んでいました)には忌避されていました。しかしあれはプログラムをテープからロードするのを待っている状態で、「BASICのプログラム」をロードしたらBASICが使えるようになると後に知り、「へー、BASICもプログラムなのか! いつかBASICそのもののプログラムを書いてみたいなあ」と思い、その10ウン年後にX68000で「ぺけBASIC」というBASICインタプリタを書いてその夢を叶えました。

*2:たまに怒られて追い払われたりもしました(苦笑)。

*3:うちの娘が低学年だったときには、自分の名前を漢字で書いたら、まだ習ってない漢字だとバツされたことがありました……。