PS3のターゲットはプチ富裕層

Wiiの価格が発表されたと思ったら、PS3の予価が改定されました。

プレイステーション3は4万9980円で発売に--全機種HDMI搭載へ
http://review.japan.zdnet.com/news/c20243548.html

20MBモデルにもHDMI端子を積んだのは正解だと思うが*1、値下げは正直どうだろう。


もともとPS3を買うつもりだった人が喜ぶのは間違いない。
が、PS3を買うつもりがなかったり、買うのを保留していた人が購入に転じてくれないと、ただ売上を減らすだけで全く意味がないことになる。


では試しに、PS3購入を保留している人間にきいてみよう。

「いやあ安くなったのは悪いことじゃないけど、まだちょっとなあ」

じゃあ、どうしたらPS3買う?

「GT5が出たら買う〜。その頃には(筐体の)デザインも、も少しましになってるだろうし」

ソフト名は人によって違うだろうが、購入予備軍の9割(独断)はこんなこと思ってる。そいつらには今回の値下げは全く効果ない。


そうした中、久夛良木さんの発言が(あまり良くない意味で)注目を集めている。

PS3の購入層は、売れ行き好調な大画面の薄型テレビを手に入れ、高品質の映像世界を楽しむような人たち。SCEIの久多良木健社長も「量販店で薄型テレビを買えば、その時に付くポイントで『PS3』を買える」ともくろむ。
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200609210004a.nwc

批判を読みたければ、"ps3 ポイント" でぐぐって適当に見つけてください……


まあ例によって、ぶっちゃけ過ぎのきらいはあるが、これをターゲットの明確化ととらえてはどうか。
つまりPS3の当初のターゲットは、50インチオーバーの大型テレビを買っちゃう「プチ富裕層」とする。
せっかくの「高い買い物」を有効に使いたいというのは当然の欲求だろう。だが、フルHDで50インチとなると、そのスペックを活かすコンテンツはまだほとんどないと言っていい。
そこにBDプレイヤーとしてのPS3だ。
本当にポイントで買うかどうかは別にして(苦笑)、テレビ本体の1割程度の出費で活用の幅が大きく広がる付加価値商品としては、十分以上の訴求力を持つ。6万なんてちょっとしたテレビ台より安いんだから!
なんなら、ビックカメラの大型テレビ売場に残らずPS3を置いて貰えばいい。量販店も大型テレビをより魅力的に見せることができるなら大歓迎だろう。
この大型テレビ購入者達は、素晴らしい映像を自慢したくてならない。ホームパーティとかして見せびらかしてくれる。そうすると触発された人(ホームパーティに呼ばれるくらいだから、同じ「プチ富裕層」)がまた大型テレビと一緒にPS3を買う。バイラルマーケティング効果抜群だ。
何がいいって、ライバル達はこの手法を採れないこと。Wiiは論外だが(DVDも再生できないの!?)、XBox360もたいして違わない(別ドライブってパソコンじゃあないんだから……格好悪くてうちのリビングには置けないよ)。
ローンチで台数を用意できないのも、この戦法ならあつらえたようにぴったり。大型テレビと一緒に売れればいいのだから。


……と、その観点から今回の値下げを見ると、やはり効果を疑問視せざるをえないと言いたくなる。
50インチオーバーのテレビを買う人間が、PS3を「1万3千円安くなったから買う」わけがない。判断基準はあくまで十分な付加価値があるかどうかだけだ。
そんな値下げする原資があるなら(13000円×日本国内のローンチだけでも10万台=13億円)、BDタイトルを50でも100でもかき集めた方がどれほど値打ちあるか。
その上で、「ローンチタイトルが少ない? まだそんな前時代的ゲーム機のようなことを言ってるんですか。PS3は発売された瞬間から、PS3ならではの数百を越えるエンターテイメントコンテンツを提供します!」くらいのことを言って欲しいなあ……

*1:単に耳を疑った仕様が是正されただけとも言える