CGM の次のステージは「世界観の提供」がポイント

CGM(Consumer Generated Media) は "Web2.0" の重要な要素の一つで、blog はその代表的なものの一つであったわけだが、そろそろ次のステージを迎えようとしている。


CGM というくらいだから、一般ユーザに作成可能なものでなければならない。作成するのに最も敷居の低いコンテンツは「テキスト」だ。
だから CGM の第1ステージの始まりは blog だったわけだ。
もちろん、単なるテキストというだけであれば掲示板や日記も該当しうるが、blogにはそれらにはない「ネットワーク効果への期待」という仕掛けがあった。
記事を書くことで、掲示板とトラックバックRSSによりミニコミュニティが自動的に作られ、あるいはコミュニティに参加でき、アクセスが増える、という期待から、blog は数多くの「発信する消費者」を生み出した。


同様に敷居の低い写真については flickr がカバー。さらに消費者は、作成に敷居が高い動画についても乗り出していく(YouTube)。
同じく「ネットワーク効果への期待」がそこにある。
と、ここまでが第1ステージ。


第2ステージは「CGM のビジネス化」のためのものとなる。それは間違いないところ。
では、具体的にはどういうステージになるのか?


まだ、「これぞ CGM のビジネス化の代表!」というめざましい成功例は出てきていないようだが、その理由としては以下の3つが考えられる。

  • (1) 明確なサービスの差別化ができていない
  • (2) 作成されたコンテンツの SN比が低い
  • (3) 玉石混淆のコンテンツから、質の高いコンテンツの選出方式がまだない

(1) は明確で、現在の CGM のほぼ全てが「ネットワーク効果への期待」のみに頼っており、操作感の違いなど些末なレベルでしか争えていない。
全く別の「仕掛け」が必要なのだ。


ついで前後するが、先に (3) から見ていく。
「質の高いコンテンツ」を選出する方法として、今のところモデレーションによるランク付け(つまり、大勢が支持したものほど良い)が主流となっている。
この方式は、データの形式に寄らず適用可能というメリットはあるが、コンテキストをランキングに加味することができなかったり、安定した評価を期待できない(「衆愚化」などと言われている)という難点がある。
ここで具体的な解を示せないのは心苦しいが、コンテンツの選出方式を考慮するのに、これら「コンテキスト」と「評価の安定」は絶対的に必須になるだろう。
新しい CGM サービスを始めるなら、是非これらを(せめてどちらか片方くらいでも)満たしているかどうか考えてみて欲しい。


戻って、(2) の「SN比の低さ」については、CGM である以上しかたがないという考え方もあるかもしれない。
だが、それではいつまでたっても次のステージに進むことはできないし、またここにこそ差別化ポイントがあると考えている。
ヒントは既に存在している。Google Earth だ。


最初に Google Earth を見たとき、これは確かにとんでもなくおもしろい、けど、一体これが Google の何の役に立つんだ? と、しきりにいぶかしんだものだった。
が、SketchUp の買収で、突如 Google Earth の役割が姿を現す。「3Dモデルデータを収集する仕掛け」としての役割だ。
あのリアルで精細な、マウスでぐりぐり動く地球に自分が3Dモデリングしたものが置けるのなら、消費者は喜んで精細なパーツを作りまくる。しかも、その質の高いモデルデータには、最初から正確な緯度経度、高度、向きなどの情報が付いてくる。これほど優秀な「3Dモデルデータの収集装置」はあるだろうか。


もしも、Google Earth が航空写真を使わず衛星写真だけですませていたとしても、それだけでも十分すごいアプリケーションだっただろう。
だが、消費者は3Dモデルを喜んで作っただろうか。作られた3Dモデルや結びつけられたメタデータ(緯度経度)の質は?


これで「CGM でも、コンテンツの SN 比を高めることができる」方法のあることがわかっただろう。
その方法とは、より汎用的な表現を用いると、「CGM のベースとなる世界観を提供する」だ。
世界が精細で魅力的であるほど( Google Earth は文字通り「世界」を提供したわけだが)、寄せられるコンテンツの質は高くなる。
これが CGM が次のステージに進む解ではないかと思っている。


ただし、この方式にもデメリットはある。提供した世界観による「しばり」だ。
Google Earth/SketchUp の場合は、どうしても「地上に存在するもの」のモデルデータの収集に特化してしまう。Google Earth に宇宙戦艦を浮かべてやろうという人は、残念ながらあまり居そうにない……